演劇芸術家(卵)の修行日記

芸術としての人間模様とコミュニケーションについて。

盆と正月と誕生日とクリスマスが同時にやってきた!

めでたい!今宵は本当にめでたい!何がそんなにめでたいか? 2011年、僕が東京ノーヴイ・レパートリーシアターに入団し、アニシモフ氏に師事し始めてそれから5年、今日初めて後輩ができたのです。 うちの劇団はそうそう簡単に俳優を採らないのだけど、本当…

世田谷/街の灯

東京に滞在する時にいつもステイさせてもらってる世田谷の近所に、すごく味のあるおじさんが30年以上やってる「街の灯」という半畳ほどの、味のあるクレープ屋さんがある。 おじさんは役者で、若い頃からずっと役者で、同時にそのクレープ屋さんを毎日午後3…

理想主義者、夢想家の出番ですよ!

心身ともに澄み渡り過ぎていてすこし怖い。一秒一秒が惜しくて、もしかして自分が思ってるより自分の持ち時間は残り少ないのか・・・とか思ってしまう。 でもそれは残りの寿命がどれだけであっても、本当は変わらないのだろう。何よりも大切で代えが効かない…

ピロシキとウォッカ、赤の広場と白い大地

劇団のロシア遠征の記録映像の編集にとりかかる。一つにはご支援頂いたパトロン/スポンサーの方々に御礼としてお見せするため。もう一つは100年後200年後に俳優を志す人々のため。 大袈裟かもしれないけど、現代演劇の祖、スタニスラフスキーが日々の稽古や…

演出家に必要な資質とは。

俳優に最も必要な資質は「注意力」。集中力と言い換えてもいい。 では演出家に最も必要な資質とは何だろうか?師匠である演出家アニシモフはこう言う。 「観察力」 6年前に参加したアニシモフさんの演出家WSで、街でいろんな人の歩き方を観察し、そのなかか…

ロシア凱旋公演の終わり、新しい始まり

先月の36歳の誕生日、申年の年男として、新たな一年を思ったとき、本当にうつくしいものを見続けていたいな、と思った。 その10日後、ロシア演劇祭への出典のためにロシアへ渡り、自身としては初の海外公演、劇団としては初の国際演劇祭への参加、そこからの…

ロシアから帰国して腹くくる

ロシア公演を終えて日本に帰ってきて、まるで9回投げ終えたピッチャーがボールを握りしめるような、3Pシュートを放った瞬間にネットを揺らすことを確信しているような、そんな手応えがある。 演劇という、本当には結果の測定できない世界に身を投じて、ここ…

モスクワでの古事記公演

モスクワで舞台「古事記」を上演してきました。ロシアでモスクワ芸術座のプロデューサーを務めていた方が奔走して下さっての自主公演でしたが、なんと満員御礼! ロシア人にとっては全く未知の「古事記」という作品に何百人もの観客が押し寄せることに、プロ…

五里霧中

ログとして自分の為に書く。凡そ3年ぶりのストレートプレイの集中稽古。ここ数年は儀式劇としての古事記とか、単発での公演とか、あと一年芝居を休んだりとかで、ここまで集中稽古する機会がなくて、そのことによってここまで心身ともに俳優であることを忘れ…

僕らがロシアへ旅する理由

「この世界は絶対なんかおかしい、自分には絶対なんかできるはず」 そう思い立って2006年26歳の時、サラリーマン辞めて2年間の世界放浪の旅に出て、2008年、自分なりのビジョンを持って帰国し、それから2年間理想と現実の狭間で何をやってもうまくいかず夜な…

お祭り男、ロシア国際演劇祭へ行ってきます。

声を発することを恐れて永らく口をふさいできたけど、このままじゃ終われん、このままでは死ねん、と思いブログを再開することにした。ロマンやビジョンが先走ってばかりの自分から、現実にぶち当たって現実乗り越えてく自分へ、このブログもそんな珍道中に…

古事記稽古ログ

古事記稽古。一幕。宇宙開闢から、イザナギ・イザナミの神産み、国産みを通しでやる。演劇というより、完全に儀式。魂が浄化される感覚。アニシモフさんはそこにいるだけ。それだけで空間が宇宙になる。僕はほとんど座っているだけ。座って、内面でせっせと…

希望

十月の新作舞台「古事記」に向けての秋季初稽古で演出家のアニシモフさんが、近代から現代にかけてのロシア人からみた歴史を語ってくれた。人類が歩んできた道。19世紀初頭、そこには精神の生活があった。トルストイが登場し、ドストエフスキーが現れ、ツル…

回転

地球は同じ方へ自転し公転し、太陽系も銀河系も前方へ前方へ曲は始まれば終わりへ命も生まれれば死へ死へ向かって死へ向かってとりあえず死ぬまでは歌い踊るのだメシを食えば満腹にやがて空腹に月も満ちては欠け明日はは台風のスーパームーン京都の山奥にい…

真剣なものだけが美しい

「真剣なものだけが美しい」チェーホフ作"かもめ"劇団の先輩のTシャツのバックプリントに書いてあったその台詞、なぜか心に留まって、何かと思い出していた。「きみは主題を抽象的な思想の領域からとつてきた。当然のことです。なぜなら、芸術作品は必ず、何…

ジャンプ

真っ直ぐに突っ切らなければならない地平線の向こうを見て真っ直ぐに突っ切らなければならない言葉にしたことを未来から今へ手繰り寄せねばならないそれを手にしなければならないなぜ死ぬのかとなぜ死ぬと知っているのかとそれがいつだと誰が知るのかと知ら…

夢をあきらめないこと

ぜんぜん理由も根拠もないけど、僕は演出家になるしかないと思っている。人生なに一つうまくいかないし器用にやれない。才能なんてあるかどうか分からないしやってみんと確かめようもない。「30も過ぎて芝居なんて、遅いですかね...?」って先輩に相談したら…

演劇という山登り中のモノローグ

演劇芸術の頂。それはどこだろうか? オリンピックの金メダルみたいに、誰かと競うものではなく、僕自身が僕自身として、この人生で登ると決めた山の頂き。 僕はそこへ辿り着けるだろうか?辿り着くまでに、何回諦めそうになるだろうか? しかしなんと険しい…

記憶をとりもどす

僕は記憶を取り戻しつつある。 遠く忘れ去られた宇宙の彼方にある記憶。 なぜここにやってきて、なぜここに今生きているのか。 もう少し現世的には、なぜ僕はすべてを捨てて旅に出て、 いちばん居たくなかったこの国に根を下ろしたのか。 わけもわからず、無…

大雪のなか想像ツアー

13年ぶりの大雪が東京で降っている。 13年前というと2001年で僕はまだ大阪にいたから、僕の知る限り東京での最大雪だ。雪で仕事も休みになって、お茶を飲みながら川上未映子さんの「愛の夢とか」を読んでいた。 今日、うちの演出家のアニシモフさんがロシア…

今日の公演。ドストエフスキー「白痴」

今日は久しぶりにドストエフスキー「白痴」の舞台に立った。ユダヤ人のエリート役人の役、ガーニャ。金のために政略結婚しようとするが失敗し破滅していく役。 半年ぶりにやる役だったけど、前より落ち着いてやれた。ただどちらにしても、役のことを全然分か…

日本唯一の"演劇芸術"学校、スタニスラフスキー・アカデミー

今秋始まった、日本で唯一の、芸術としての演劇学校「スタニスラフスキー・アカデミー」の仕事が楽しい。この学校は、ロシアで100年以上続いている伝統的な演劇術/演劇手法を教える学校で、ロシアの功労芸術家(人間国宝みたいなもの)であるレオニード・アニ…

黒子の俳優

今日の舞台公演、ドストエフスキー作「白痴」幕引き。僕は黒子で出演。いえ、黒子なので出演せず。「黒子のバスケ」って漫画の主人公はコートに立つけど、「黒子の俳優」は舞台に立ちません。しかしバスケと違って"コートの外"でなく"舞台の裏"から観る舞台…

10年目の幕が上がり、幕を閉じた。

風が吹いて、新緑の葉がこすれるような拍手の音。朝日が射すような。 今日の舞台、ブレヒト作「コーカサスの白墨の輪」の幕が閉じて、そんな拍手を浴びた。それはショーやエンタメや音楽ライブでは浴びない類いの拍手だった。 さっき、所属している劇団「東…

劇場という家、舞台という生活の場へ。

僕は故郷へ帰ってきた。 劇場という家、舞台という生活の場へ。 今日、我が劇団「東京ノーヴイ・レパートリーシアター」の記念すべき10thシーズンが始まった。演出家アニシモフさんが3ヶ月ぶりに来日し、明日からの公演のために稽古をした。 演目はドストエ…

ケータイを捨て、劇場へいこう。

演劇と、それを目撃する観客との関係は、まるで一人の人間と一人の人間との出会いのようであります。 それは人生と人生との出会いでもあります。 舞台に10人の俳優、10の役を見る時、観客は紛れもなく10の人生と出会う。100人の観客がそこにいるとき、僕たち…

春の夜の夢

奔走すると情熱がわきあがる。 表現するとインスピレーションがところてんに入ってくる。 歌うと腹が空く。 走るとぐっすり眠れる。 話せばもっと聴こえる。 男をつきつめて女になる。 働きかけるほどに、背骨に電流が走る。 踊らせるほどに細胞が沸騰する。…

未熟であること、未熟であること。

サローヤンの舞台「アレキサンドル・ドュマ以降のアメリカにおける詩の状況」の二日目が終わった。今日は病体押しての舞台で、開演1時間前に1000円の栄養ドリンク飲んだけどあんまり効かなかった。 身体が重いと、やっぱり演技も重い。軽さがすごく重要な役…

なぜどうして僕は舞台に辿り着いたか・・・

ドストエフスキーの「白痴」公演が終わった。密林の中でコンデンスミルクを2ℓ飲むような濃ゆい時間だった。実につかれた。 演出家アニシモフさんは今日の出来にはやや不満だったようだが、昨日の公演のことを打ち上げで大絶賛していた。「あんな芝居を観る…

真実のもつ治癒エネルギー

今日はドストエフスキー「白痴」の公演だった。 本番前の稽古で、アニシモフさんがチェーホフの妻、クニッペル・チェーホフの話をしてくれた。「彼女は『桜の園』のラネーフスカヤ役を45年間やった。飽くことなく、それは45年間植物のように成長し続けた。役…